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このページは少しむずかしい内容があるので、読み飛ばしてもらってもかまいません。 理解するには中学~高校生程度の数学の知識が必要です。 できるかぎり簡単に書いていますので、興味のある方はごらんください。 |
さて、水素の通りぬけやすさである水素透過能を考えるためには、どうして水素は膜の中を移動(拡散)していくのかを考える必要があります。
そのためにはまず下の図をごらんください。
左の方にたくさんの人がつめ込まれていますね。これではとても窮屈で気持ちよくありません。
逆に右のほうは空いているのでとても快適です。この状態ならだれでも右のほうに移動したいと思いますよね。
水素もこれと同じように混んでる方から空いてる方に向けて拡散していくのです。

このとき、左のスペースが混んでいるほど、または右のスペースが空いてるほど、右に移動したいと思うはずです。
これを数式にすると、次のようになります。

この式で、Jは流れている量に対応し「流束(りゅうそく)」といいます。
c1は金属の中での混んでいる方の混みぐあい、c2は空いている方の混みぐあいです。
この混みぐあいのことを「濃度(のうど)」といいます。
また、Lは膜の厚みです。厚みが小さいほど流れやすくなります。
この式は、「フィックの法則」と呼ばれる式からきています。
さて、これは膜の中での水素の移動の式です。
ではなぜ膜の中が水素原子で混みうのでしょう?
それは、水素のガスが原子に分かれて(解離して)、金属の中に入りこむ(溶解する)からでしたね(「水素透過金属膜とは」参照)。
この、解離+溶解には、次のような式が成り立つと言われています。

この式で、cは上と同じ水素の濃度、Pは水素の「圧力(あつりょく)」でガスの水素の混みぐあいと考えてください。
この式を「ジーベルツの法則」といい、ガスの水素と金属の中の水素をむすびつける数式になります。この式を上の式に入れることで、次の式がでてきます。

ここで、Φを「水素透過係数(すいそとうかけいすう)」といい、水素の通りぬけやすさの指標になっています。
式を見ると、Φ=D×Kという形になっています。Dは水素の「拡散係数(かくさんけいすう)」と呼ばれるものであり、金属の中での水素の動きやすさを表します。
また、Kは「水素溶解度係数(すいそようかいどけいすう)」と呼ばれるものであり、金属の中への水素の入りこみやすさを表します。
つまり、φは水素の移動しやすさと水素の入りこみやすさからなるものであります。
このΦを使って、その金属膜の中の水素のとおりぬけやすさを比較することができます。
人々はこのΦを色んな金属に対して調べてきました。
さて、この式は確かに水素の通りぬけやすさを表すのにある程度有効ですが、完全ではありません。
実際この式が成り立たないケースが数多く報告されています。下の図をごらんください。
この図は実際にNb(ニオブ)という金属膜で水素を透過させたときの実験結果です。
もし(3)式が成りたつならば、Jと√P1と√P2
は比例し、グラフは直線的になるはずです。
しかし、この図を見るかぎり、それぞれのデータの点が直線的にまっすぐならんでいるようにはとても思えません。
すなわち、このケースにおいて(3)式が成立しないのです。
なぜこのように成立しない場合があるのでしょう?
それは、さきほどのジーベルツの法則が、実際には水素があまり混みあっていないときにしか成り立たないからです。
実際に水素が通りぬけているとき、金属の中には水素がとてもたくさんいるのにもかかわらず、そんな水素が少ないときの式を用いてはうまくいくはずがありません。
そこで私たちは次のような数式を提案しております。

さて、この式に関してはここではあまり詳しく述べませんが、少なくともさきほどの式よりも、水素が通りぬける現象を表現できます。
まず、もちろんこの式においても、水素の混みぐあいに差があるほど水素が移動しようとします。
さらに、この式では、水素の混みぐあい以外にも水素の居心地の悪さが取り入れられています。
下の図をごらんください。
このように、同じ混みぐあいでも、周りの環境によって気持ち悪さは変わりますよね?
周りがへんなおっさんばかりだとすぐにでも動きたいですが、きれいなお姉さんばかりが周りにいるならば、混んでいてもそれほど苦ではありません。
水素にも周りにいてほしい原子とそうでない原子がいて、そうした効果を取りいれることで、水素の透過というものをより良く表現できます。
下の図をごらんください。
この図はさきほど直線的な関係がなかったグラフと同じ結果ですが、横軸を変えることでとても直線的に点がならんでいます。
このように、新しい式によってさらに水素の透過について理解をしていくことができるのです。
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☆ ポイント 水素透過能は水素の溶解と拡散のしやすさによって決まる水素透過係数Φで表される。 しかし、最近では水素透過能がより正しく表現できる新しい式が提案されている。 |